福岡県の久留米大学医学部を卒業し、両親の「帰ってきてほしい」という希望もあって高知へ。高知大学医学部附属病院第2外科の医局に入り、医大で1年、近森病院で1年臨床研修をした後、大学院に進みました。第2外科は胸部・腹部・血管のすべてを手がける総合的な外科です。当時は内科や麻酔科などすべての科を回るスーパーローテーションが始まろうとしていた頃でしたが、私は外科オンリーで研修を行い、ここで実践的な手術手技を学んで外科医になりました。
2007年に大学院を終了し、その半年後に医局から千葉県の病院で研修をしてはどうかとの話があり、聖隷佐倉市民病院へ。さらに半年後に静岡県立静岡がんセンターでの研修を命じられました。静岡がんセンターへは呼吸器外科のレジデントとして赴任し、毎日毎日手術の連続。入院が決まった患者さんに手術の説明をして、手術をして、術後管理をして、1週間後には退院といった具合です。外来診療はなく、患者さんと接するのは入院の間のみ。臨床医としては厳しい環境でした。ですが、多数の手術を行うことで、豊かな経験を積むことができたと思っています。
静岡がんセンターで3年3ヶ月を過ごし、今年の7月から高知県立安芸病院に赴任しました。軽いケガや風邪引きの患者さんがやってくる、「まちのお医者さん」としての仕事は久しぶりです。小さなお子さんからおじいちゃん・おばあちゃんまで、年齢も症状も幅広い患者さんが診察に来られます。手術も毎週ありますし、救急車で運ばれてくる患者さんも多く、忙しい毎日です。けれども、患者さん一人ひとりに向き合い、お話しして、きちんと納得していただいた上で治療にあたることができるので、それがやりがいにつながっています。また、土佐弁を聞くと「帰ってきたな」とほっとしますね。
都会では患者さんが医師に対して疑心暗鬼になることがあり、信頼関係を築くことが難しいと感じていましたが、高知では「先生に任せちょったら大丈夫」という風土があり、みなさん素直に私の言葉を受け入れてくださいます。治療にはこの信頼がとても大切だと思っています。「おかげさまでようなった」という声を聞くとうれしいですね。
この県立安芸病院は、高知県の東部の医療を担っており、今後の期待も大きな病院です。まずは、患者さんが高知市内の病院に行かなくてもいいよう、一般的な病気であれば県立安芸病院で医療を完結させることができるように力を入れていきたいです。私は医療全般を担える医師になりたいと、内科・外科で迷いながら外科を選びました。まちの病院では、外科医だからこそ、引き受けられる範囲が広いと思っています。静岡がんセンターでは全科を回ることが必須なのですが、そこで内科を経験したことも役に立っていますね。
救急では、可能な限りの患者さんを受け入れています。今は麻酔科の専門医がいないため、手術日には高知大から来てもらっていますが、麻酔医が常勤できる体制が整えば、大きな緊急手術もできるようになります。患者さんには、さらに頼りになる病院になると思います。
現在、38歳。まだ独身なので、当直や救急の呼び出しも苦にならず仕事に打ち込めますが、食事はほとんどがお弁当や外食です。医者の不養生が心配ですが、外科医としては働き盛りの年頃です。この先だんだんと体が辛くなってくると思いますが、45歳ぐらいまでは頑張らなくては!これから若い先生方にも来てもらって、東部の医療をしっかりと充実させていきたいです。