私が医者になったのは、星を観るのが好きで、宇宙飛行士になりたいと思ったから。当時は宇宙飛行士になる道はなく、宇宙飛行に同行する医師になろうと考えました。入試の時、面接官が医師だったらあきれられたと思いますが、物理学の先生だったので「それいいね!」と言ってくれたんです。そうして医師になり、主に大学病院を中心に働いて2年前に定年を迎えました。今はこのようにあちこち飛び回って診療を行なっています。
この土佐市民病院での診療支援については、高知医療再生機構の倉本理事長からお話がありました。倉本理事長とは高知大学の病院長をしておられたころからの長いお付き合いで、高知大学医学部にも何度か行きました。けれど、いつも仕事だけの滞在だったので、高知の人たちとのふれあいは今回が初めてのことです。高知は気候もあたたかいし、人の心もあたたかく感じます。食べ物もおいしい。昔から魚は臭いものだと思っていましたが、ここで新鮮な魚を食べてそのおいしさに驚きました。来る途中に見える太平洋を臨む景色も素晴らしく、タクシーの運転手さんがいろいろな話をしてくれるのも楽しみです。
横浜から羽田まで車で40分あまり、そこから1時間半ぐらい飛行機に乗って来ますが、それほど遠いとは感じません。モンゴルの病院にも診療に行っていますので、それに比べたら近いものです。日本語も通じますし、楽しく通っています。
私が住んでいる所は横浜の北部で、山を切り開いて造った都会的で美しいまちです。住民の平均年齢が38歳と若く、オシャレで洗練されていますが、人々に笑顔が少なく、冷たい感じがします。全般的に、人の責任を追及し、自分の権利を主張する傾向が強いように思います。けれども、土佐にはお互いを尊重し合うあたたかさがあります。病院も医師と看護師の雰囲気がいいですね。単に仲がいいというだけでなく、指摘し合う勇気を持ちつつお互いに切磋琢磨する。こういう病院では事故が起こりにくいですね。