私は仕事をする上で、知識で人を傷つけないこと、職種間の仕事のすきまを埋めることを心がけています。誰かがやるだろうではなく「自分がやる!」という気持ちになれば、自然とまわりもそうなってくるものです。事故がなくなり、あなたと私で1+1=2のところを3以上の仕事ができるようになる。ここはそういう気持ちになれる病院です。月に2回、1泊2日の勤務なので、夜にはたっぷり時間があります。若い医師と話す機会が持てたらいいなと思っています。
東京の大学病院では、深刻な病状を抱えて紹介を受けて来られる方がほとんどでしたが、ここは地域に密着した病院で、いろいろな患者さんがいらっしゃいます。それでも不安を抱えて来られることに変わりはなく、お一人おひとりをきちんと「目で受け入れる」という姿勢でお話を伺います。「診察室に入って来られた時よりも、出て行かれる時の方がいい顔になっているように」というのが私の診療のモットー。そうすると「1人3分」とはいきませんので、お待たせすることもありますし診療の効率も悪くなりますが、病院にもご理解いただき納得のいく診療を行なっています。「先生話しやすいからちょっといいですか?」と、ペットの下痢について相談されたこともあるんですよ(笑)。
診療の結果、時には「がんです」とお伝えしなければならないこともあります。そのときも、不安が軽くなるまでお話しし、笑顔を取り戻していただいてから「また来週お会いしましょう」と送り出すようにしています。私は長い間剣道を続けていて、「強くなるためには、自分より弱い人を大切にしなさい」と教えられてきました。これは自分が強くなるためです。
私は、今たまたま自分よりも弱い立場にある患者さんのことを思いやる気持ちを持ち、しっかりと支えられる強い人間になりたいと思っています。